国際調査、補充国際調査、19条補正、国際公開

PCTnavi 国際段階 解説ページ 国際調査、補充国際調査、19条補正、国際公開

1 国際調査

 受理官庁から調査用写しを受け取った国際調査機関(ISA)は、国際出願の請求の範囲に記載された発明について、先行技術となるものがないか調査します。ISAは、「ISAによる調査用写しの受領から3月」又は「優先日から9月」のうちいずれか遅く満了する期間に、調査により発見した先行技術文献を列記した国際調査報告(ISR)を作成します(PCT規則42.1)。ISAは、同時に、発明の新規性、進歩性及び産業上の利用可能性についての判断を述べた、国際調査機関の見解書(ISA見解書)も作成します(PCT規則43の2.1(a))。
 ISR及びISA見解書は、作成後速やかに、出願人及び国際事務局に送付されます(PCT18条(2), PCT規則44.1)。ISR及びISA見解書を受領した出願人は、19条補正、非公式コメント提出、国際予備審査請求等の応答をする余地がありますが(PCT19条(1)、PCT31条)、特に米国、欧州、中国、韓国等の審査制度が整った国に移行する場合は、何も応答せず、各国の審査官の判断を待つ場合が多いのが現状です。なお、ISA見解書で肯定的な見解が示された場合には、PCT-PPHを利用し、各国での早期権利化を図ることも考えられます。
 なお、国際調査における「引用文献のカテゴリー」については、こちら(Q9~Q11)をご参照下さい。

2 補充国際調査

 出願人は、管轄ISAによって行われた国際調査に加えて、優先日から22月を経過する前に、補充国際調査を請求することができます(PCT規則45の2.1(a))。補充国際調査を利用すれば、例えば、英語で出願していなくとも、欧州特許庁による国際段階での調査結果を得ることができます。ただし、その場合、国際出願の翻訳文を提出する必要があります(PCT規則45の2.1(c)(i))。
 なお、補充国際調査に係る手数料(オフィシャルフィー)及び弊所手数料についてはこちらをご参照下さい。
 また、補充国際調査についてはこちら(Q12~Q15)もご参照下さい。

3 19条補正

 ISR及びISA見解書を受領した出願人は、国際事務局に対して、19条補正書を提出し、請求の範囲を一度に限り補正することができます(PCT19条(1))。19条補正は、「ISAによるISR及びISA見解書の送付の日から2月」又は「優先日から16月」の期間のうちいずれか遅く満了する期間に提出する必要があります(PCT規則46.1)。
 19条補正に係る手数料(オフィシャルフィー)及び弊所手数料についてはこちらをご参照下さい。
 なお、ISA見解書の内容が各国の審査官にどの程度参考にされるかは不明であり、むやみに権利範囲を狭めてしまうことになりかねないため、19条補正をするのは稀といえます。一方で、この段階で有効であると思われる補正をしておくことで、各国移行後のOA回数が減る可能性はゼロではなく、その可能性にかけて19条補正をすることも考えられます。

4 国際公開

 PCT出願は、優先日から18月を経過したとき(原則、18月経過後の最初の木曜日)に速やかに公開されます(PCT21条(1),(2)(a))。ただし、国際公開の技術的準備が完了する日より前に取り下げられた又は取り下げられたとみなされたPCT出願の国際公開は行われません(PCT21条(5))。また、国際出願が、優先日から18月を経過したときに、国際出願の国際公開を行う必要がないことを宣言した国のみを指定している場合にも国際公開されません(PCT64条(3)(b))。
 仮保護の利益を早期に得る等の目的で早期の国際公開を希望する場合には、国際事務局にその旨請求することができます(PCT21条(2)(b))。ただし、登録が仮保護の権利行使要件である国において登録にならなかった場合、仮保護による権利を行使することができないにも関わらず、公開された発明が第3者に早期に使用され得るというデメリットも考えられます。また、早期公開には手数料がかかります(PCT規則48.4(a))。
 なお、国際公開が行われる日についてはこちら(Q16)もご参照下さい。