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国際段階

Q1:日本に出願して特許権を取得すれば、世界中で権利行使できますか?

原則として、法律は自国領域内においてのみ適用されます(属地主義)。よって、日本で特許権を取得したというのみでは、外国における特許発明の実施者に対して権利行使することはできません。

Q2:日本で特許権を取得できたので、外国でも権利取得できますか?

属地主義のため、ある発明に特許を与えるか等の判断は、各国の法令に基づいて判断されます。言い換えれば、日本で特許される発明であっても外国で特許されるとは限らず、反対に、外国で特許される発明であっても日本で特許されるとは限りません。

Q3:外国で権利取得するにはどうすればよいですか?

原則、外国において権利取得をする場合、各国の異なる言語で出願書類を作成し、外国の特許庁に直接出願する必要があります。しかし、出願書類の準備負担、出願の手続負担が極めて大きくなると考えられます。このような問題は、権利取得したい国が多数にわたる場合に特に顕著となると考えられます。このため、国際出願を利用します。

Q4:国際出願のメリットは何ですか。

ア.国際出願をすることで、国際的に統一された願書を用いて、日本語(英語も可)で出願書類を作成し、1通だけ日本国特許庁に提出すればよいことになります。これにより、全てのPCT加盟国に同時に出願したことと同一の効果を得られるため、手続負担が軽減されます。

イ.各国への移行手続は、原則優先日(原則基礎とした国内出願の日)から30月以内に行えばよく、外国語による出願書類の準備期間を長期にわたって確保できます。このため、短期間に外国語による出願書類を準備する必要がなく、出願人の準備負担が軽減されます。

ウ.各国への移行手続は、原則優先日から30月以内に行えばよいため、移行国の判断を先延ばしにすることもできます。その結果、当初予定していた移行予定国のうち一部の国への移行を中止することになれば、国際出願を行わない場合に比べて、国際出願の方が安価になる可能性があります。

エ.先願主義のもとでは、発明を保護するためには早期に出願日を確保することが重要となります。国際出願をして国際出願日が認定されれば、国際出願日が外国における出願日となり、軽い負担で出願日を確保できます。

Q5:権利取得をしたい国が国際出願の時点で不確定ですが、問題ないでしょうか。

国際出願では、国際出願の時点で有効なPCT加盟国の全てが指定国とされます(みなし全指定)。そのため、各国への移行手続の際に権利取得が必要な国のみを選んで移行手続を行うことも可能です。各国への移行手続の際に権利化を必要としなくなった国については、特に手続を行う必要はありません。

但し、国際出願の出願書類は、移行予定国に応じて作成する(例えば、米国が移行予定国に含まれる場合には、クレームの文言が図面で表示されるように図面を追加する)ことが望ましいため、移行予定国は予め決めておくことが望ましいと考えます。

Q6:国際出願の主体的要件は何ですか?(国際出願をすることができる者の要件は何ですか?)

国際出願の出願人は、日本国の居住者及び国民であることが必要です(PCT9条、国際出願法2条)。国際出願の出願人が二人以上である場合には、国際出願の出願人のうち、少なくとも1人が日本国民、又は、日本国の居住者であることが必要です(PCT規則18.3)。

Q7:パリ条約に基づく優先権(パリ優先権)を国際出願において主張できますか?

できます(PCT8条(1))。

Q8:受理官庁、国際調査機関とは具体的に何のことですか?

受理官庁とは、国際出願を受け付ける国内官庁等を言います(PCT2条(xv))。
国際調査機関とは、国際調査を実施する特許庁を言います(PCT規則35.1)。
国内のお客様が国際出願をする場合には、受理官庁及び国際調査機関は基本的に日本国特許庁です。

Q9:国際調査報告において「引用文献のカテゴリー」が示されていますが、その見方を教えてください。

「引用文献のカテゴリー」としては、主として「X」、「Y」及び「A」などがあります(PCT国際調査及び予備審査ハンドブック(詳細はこちら)、別紙A 引用文献のカテゴリー)。国際調査報告では、その右側に「引用文献名」及び「関連する請求項の番号」が順次示されています。

 「X」は、その右側の引用文献が、それ単独で、そのさらに右側の請求項に係る発明の新規性又は進歩性を否定すると考えられるものであることを意味しています。

 「Y」は、その右側の引用文献が、他の文献との組合せによって、そのさらに右側の請求項に係る発明の進歩性を否定すると考えられるものであることを意味しています。

 「A」は、その右側の引用文献が、そのさらに右側の請求項に係る発明に対して、「特に関連のある文献ではなく、一般的技術水準を示すもの」を意味しています。

Q10:国際調査報告において「引用文献のカテゴリー」が「X」又は「Y」である場合、国際段階で19条補正又は34条補正を行った方がよいのでしょうか?

必ずしもそのような補正を行う必要はありません。国際調査報告は、国際調査機関である日本国特許庁の判断であり、各国特許庁を拘束するものではなく、各国移行後、各国特許庁で異なる文献が引用されて異なる判断がなされる可能性もあるからです。

Q11:国際調査報告において「引用文献のカテゴリー」が「A」のみであり、国際出願が日本の指定を含む場合(通常は国際出願が全指定である場合)、移行した後の日本出願について必ず特許査定を得ることができるのでしょうか?

特許査定が得られる可能性は高いと思いますが、必ずしも特許査定が得られるとは限らないため注意が必要です。国際調査報告では、主として新規性、進歩性及び産業上の利用可能性について判断が述べられるにすぎず(PCT規則43の2.1(a))、記載不備については移行後の日本出願についてはじめて指摘される可能性もあるからです。

Q12:補充国際調査とは何ですか?

補充国際調査は、国際調査を行う国際調査機関(日本国特許庁)とは別の国際調査機関(例えば欧州特許庁)により、国際調査を補充するために行われる国際調査をいいます(PCT規則45の2.1(a))。

Q13:補充国際調査を行ってもらうにはどのような手続を行えばよいですか?

国際事務局に対して補充国際調査の請求をすることが必要です(PCT規則45の2.1(b))。また補充国際調査の請求を行う場合には、手数料(補充調査手数料及び補充調査取扱手数料)を納付することが必要です(PCT規則45の2.2(a)及びPCT規則45の2.3(a))。

Q14:補充国際調査のメリットは何ですか?

補充国際調査の請求を行うと、国際出願が英語で行われていなくても、例えば欧州特許庁による調査結果を知ることができます。そのため、欧州に移行する前に、欧州特許庁で引用される文献を予め知ることができます。この文献は、欧州に移行するかどうかの判断基準に使用できます。

Q15:補充国際調査を行う際に留意すべき点は何ですか?

国内移行期限(通常、優先日から30月)よりも早い時期(優先日から22月を経過する前)に、国際出願の翻訳文を提出する必要がある点です(PCT規則45の2.1(a)及びPCT規則45の2.1(c)(i))。

Q16:国際公開は優先日から必ず18月後に行われるのでしょうか?

国際公開は、原則として国際出願の優先日から18月経過後速やかに行われます(PCT21条(1),(2)(a))。具体的には、国際公開は、18月経過後の最初の木曜日に行われます。したがって、実際の国際公開日は、必ずしも国際出願の優先日から18月後に行われるわけではないようです。なお、正確な国際公開日は、国際事務局に問い合わせをすると教えてもらうことができます。

Q17:国際段階で情報提供はできるのでしょうか?

国際出願が国際公開された後、優先日から28月までの間に国際事務局が提供する電子システム(ePCT)を通して行うことができます(PCT実施細則801(a)、802(a)(i)(ii))。情報提供は匿名で行うことも可能です(PCT実施細則801(b)(i))。

Q18:19条補正を行う場合の創英の手数料について教えてください。

弊所では、担当者による検討費用(タイムチャージ)及び国際事務局に対する手続費用が手数料として発生します。弊所手数料については弊所までお問い合わせ下さい。

Q19:国際出願時の国際調査手数料について軽減措置が適用される場合がありますが、特許庁に対して軽減措置の適用申請を行う場合、創英では手数料が発生するのでしょうか?

発生します。そのため、弊所手数料の金額と軽減される金額との差額を考慮して軽減措置の適用を申請するかどうかを決めるのがよいと思われます。弊所手数料については弊所までお問い合わせ下さい。

Q20:国際予備審査請求を行うメリットは何ですか?

メリットとしては以下の点が挙げられます。

・国際予備審査機関による否定的な内容の見解に対して答弁(反論)を行うことができる(PCT34条(2)(c)、PCT規則66.3)

・請求の範囲だけでなく、明細書又は図面についての補正(34条補正)をも行うことができる(PCT34条(2)(b)、PCT規則66.2(c),66.3)

・国際予備審査機関による否定的な内容の見解が肯定的な内容の見解となった場合には、実質的に審査機関を有さない国及び日本に移行する際に特許が得られやすくなる

・国際予備審査機関による否定的な内容の見解が肯定的な内容の見解となった場合に、PCT-PPH(PCT出願の国際段階成果物を利用する特許審査ハイウェイ)により、移行国において簡易な手続で早期に審査を受けることができる。

Q21:創英で行われる国際出願のうち国際予備審査請求が行われる国際出願の割合は高いのでしょうか?

国際予備審査請求が行われる国際出願の割合は低いです。例えば、2021年10月~2022年9月の間に国際調査の作成期限を迎える国際出願については、国際予備審査請求が行われる国際出願の割合は約1.5%でした。

Q22:19条補正と34条補正との違いについて教えてください。

19条補正と34条補正との違いは下記表のとおりとなります。

19条補正 34条補正
請求先 国際事務局 国際予備審査機関
(通常は日本国特許庁)
回数 1回 制限なし
補正の対象 請求の範囲 請求の範囲、明細書又は図面
補正に対する見解 なし 国際予備審査報告
Q23:翻訳文提出期間(移行期限)はいつですか?(翻訳文はいつまでに提出すればよいですか?)

ア.原則
翻訳文は、優先日から30月以内に提出する必要があります(PCT22条(1)、39条(1)(a))。
イ.例外1(優先日から30月の期間よりも長い期間)
PCTの規定上、優先日から30月の期間よりも遅い時に満了する期間を翻訳文提出期間として定めることは許容されています(PCT22条(3)、39条(1)(b))。そのため、その国内法令により、翻訳文提出期間を、優先日から31月以内、又は、32月以内としている国もあります。
ウ.例外2(優先日から30月の期間よりも短い期間)
自国の国内法令との整合性が確保されるまで、以下の期間を翻訳文提出期間としている国もあります。
(ア)原則、優先日から20月以内であり、優先日から19月以内に国際予備審査請求を行った場合等には、優先日から30月以内とする。
例…ルクセンブルク。
(イ)原則、優先日から21月以内であり、優先日から19月以内に国際予備審査請求を行った場合等には、優先日から31月以内とする。
例…タンザニア。

Q24:日本出願を基礎として優先権を主張した国際出願を日本に移行させる場合に留意すべき点はありますか?

あります。
移行後の出願は、国内優先権主張を伴う国内出願となりますので、原則として弊所への委任状の提出が必要になります(日本特許法9条)。委任状を提出しない場合には、特許庁より、優先権に関する通知により補正指令が出されます(日本特許法17条3項)。
また、国際出願の優先権主張の基礎とした日本出願について審査結果が既に得られており、かつ、国際調査報告時に先の調査結果の利用結果が「利用できる」とされている場合、調査手数料の一部(57,000円。2023年2月28日時点)の返還が認められます。返還を受けるためには、出願人は、特許庁に対して返還請求を行うことが必要になります。

Q25:国際出願を日本に移行させた後に留意すべき点はありますか?

国際出願を日本に移行させた後に審査請求を行う場合には、審査請求料が通常の国内出願よりも減額される(5万5000円以上。2023年2月28日時点)点に留意する必要があります。

各国移行(共通)

Q1:国際出願に関し、出願人の国籍が移行に影響するケースはありますか?

レアケースですが、出願人の国籍が受理官庁の選択に影響を及ぼす可能性があります。例えば、外国国籍の出願人が外国出願を基礎出願として国際出願を行う場合に、日本の特許庁はその国際出願を受理できないケースが想定されます。

Q2:各国移行時において図面について気を付けることはありますか?

発明の構成要件として図示されていることを要件とする国があるため、国際出願時に請求項の記載と図面との対応関係を確認する必要があります。

Q3:国内移行時に方式審査で気を付けることはありますか?

国際出願番号、優先権主張の基礎となる出願番号は、誤りがないか気を付けておくべきことです。また、代表図面又は国際公開公報の要約が国際調査機関によって変更されていないか(規則8.2,38.2)についても確認をすべきです。

国内段階【米国】

Q1:各国移行時において図面について気を付けることは何かありますか?

国際出願では、1つの図の中に複数の図を「(a)」や「(b)」といった表記を用いて含めることができますが、米国移行時にバイパス継続出願する場合や、米国移行後に分割/継続出願する場合は、35USC(米国特許法)が適用されるため、「Fig.1A」や「Fig.1B」等に修正する必要があります。この修正を失念しないためにも、国際出願時の段階から「(a)」や「(b)」といった記載を用いて複数の図を示すことはしない方がよいかもしれません。

Q2:誤記訂正は審査時にも可能ですが、移行時に自発補正としてやっておくべきでしょうか?

移行時には、マルチマルチクレームの解消等を自発補正することが多いため、その際に誤記も一緒に補正しておくと、別途補正書を提出する場合に比べて手間がかかりません。また、自発補正書の提出に代理人費用等が生じる場合、マルチマルチクレームの解消等と一緒に補正することで、費用の増大を抑えることができる可能性があります。

Q3:ISRで引かれた文献が拒絶理由の引用文献として引かれることは多いのでしょうか?ISRを事前に検討してクレームを補正することは有効でしょうか?

分野にもよりますが、ISRで引かれた文献以外の文献が拒絶理由で引かれることも多く、ISRを検討して補正を行うことの有効性は少し低いかもしれません。

国内段階【中国】

Q1:PCTの中国移行時、クレーム数を10項以内に補正したら、追加費用が回避できるのでしょうか?

いいえ、国際公開公報のクレーム項数で計算されますので、中国移行時にクレーム項数を減らしても、費用は減りません。

一方、中国国内移行時にクレーム数を増やしても、費用は増えません。なお、登録料は、請求項の数と関係ありません。

(出典:https://www.globalipdb.inpit.go.jp/application/16336/)

Q2:筆頭発明者が中国国籍の方である場合、他国籍の方である場合と異なる手続きはあるのでしょうか?

中国身分証明書のID番号を願書に記入する必要があります。記入しない場合、追加提出が要求される可能性が高いと思われます。

Q3:マルチマルチクレームの移行時の取り扱いをどうすればよいでしょうか?

マルチマルチ違反については、

①通常、拒絶理由になりますが、無効理由ではありません。

②①のため、審査段階で対応可能であり、移行段階で解消補正しなければならない事項ではないと思われます。また、審査段階で拒絶理由として指摘されない場合、登録後まで残っても権利の安定性に影響を与えません。

③特許の場合、審査段階で拒絶理由として指摘される可能性が高いが100%ではありません。

一方、実用新案の場合、方式審査段階においてマルチマルチを指摘する審査官はほぼ100%と言えますので、実用新案を選択し中国国内移行を行う場合、自発補正でマルチマルチを解消しておくことがおすすめです。

Q4:プログラムクレームの移行時の取り扱いをどうすればよいでしょうか?

プログラムクレームは、移行段階でプログラムを記録する媒体クレームに補正しておくことがおすすめです。

Q5:情報提供義務について教えてください。

自発的な情報提供義務は規定されていますが、罰則は明確ではありません。
情報提供が要求される場合、応答しないと取下げ擬制となります。

国内段階【欧州】

Q1:Euro-PCT出願による権利化にはどれくらいの時間がかかりますか?

標準的な手続きには、国際段階の31月+欧州段階の38月で、6年かかる場合があります。早期権利化のための手段がいくつかあります。
EPO – Accelerating your PCT application

Q2:国際出願時(又は国内移行時)に予めクレームを2パート形式にしておくべきでしょうか?

欧州へ移行する国際出願を行う場合、移行後の実体審査を受ける前に(出願時や移行時に)予めクレームを2パート形式にしておくこともできます。しかしながら、実体審査が行われていない段階でクレームの構成要素を先行技術にあたる部分と新規な特徴部分とに明確に分けるのは難しい場合が多いです。そのため、2パート形式にすることなく出願及び移行を行い、拒絶理由通知を受けた段階で拒絶理由及びそこで引用された文献の内容を踏まえて2パート形式に書き換えるのが一般的です。

Q3:欧州特許はEU加盟国でのみ有効なのでしょうか?

欧州特許は、欧州特許条約(EPC)に基づくものであり、EPC締約国において有効なものです。EPC締約国には全てのEU加盟国が含まれ、更に、イギリス、スイス、ノルウェー等のEU加盟国以外の国も含まれます。

Q4:単一特許指定をする際に注意すべきことはありますか?

欧州特許の付与が公告された日から1月以内に、単一特許指定の請求及び翻訳文の提出を行わなければなりません。従来のバリデーションの3月以内よりも短いので、注意が必要です。詳細はこちらをご確認ください。